科学的思考のはじまり

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 先月から食育の一環として、土作りを始めています。

 この土作りは新鮮な野菜から出た野菜くずをちぎり、ボカシや米ぬか、黒土と混ぜるところから始まります。まもなく発酵が始まり、3日後、1週間後、2週間後と間隔をおいてかき混ぜることになります。
 作業中に園児の皆さんが「一緒にやってもいい?」とお手伝いしてくれます。発酵している土の匂いを「お味噌みたいなにおいだね」と表現したり、土の中に手を突っ込んで「あったかいね~」「お野菜が小さくなってる」といろいろ気づいたことを教えてくれます。
 続いて出る言葉が「なんで?」です。確かに土からお味噌みたいな匂いがするなんて、あったかいなんて不思議です。その度に「菌ちゃんがお野菜を食べるとこういう匂いがするんだよ」「菌ちゃんはご飯を食べると熱を出すんだよ。小さくなったのは菌ちゃんが食べているからだよ」と説明するのですが、それでも疑問はなくなりません。かき混ぜる度に野菜の姿が消え、土と区別がつかなくなってしまうのは理屈で理解している大人でも不思議な気持ちになりますので、子どもにとってはなおさらのようです。
 じっと考えこむ様子に、言葉にはならないものの、さまざまな想像を広げているだろうと思われました。

 最初の問いを発し、それをなんでなんだろう? と考えるというのは、間違いなく科学的思考です。最初の問いを発見できるようになると、大人が何か教えようとするよりも速いスピードで学び始めます。大人の役割はこの最初の問いを見逃さず、自分で考えるよう仕向け、アシストすることにあります。
 自分で考えるということには、試行錯誤、いらだち、解決の喜び…といった情緒がともないます。情緒が発達するとさらに疑問を発見し、試行錯誤し…という学びの機会を持てるようになります。
 逆に正解や近道を大人が先回りして教えてしまうと情緒の発達が起こらず、ついには疑問や答えは大人が持っているものと思い、自分では考えることが苦手になってしまいます。

 科学的思考のはじまりを大切にし、情緒を育んでいけるよう、心がけてまいります。